17・18シーズン冬の移籍市場は例年以上に動きが早かった。
最初に動きを見せたのがリバプール。市場が開く3日前にDF史上最高額の7500万ポンド(約109億円)でサウサンプトンからオランダ代表CBのフィジル・ファン・ダイクの獲得を発表すると、そのリバプールから1億2000万ユーロ(約156億円)でフィリペ・コウチーニョがバルセロナへと移籍。いきなり大きな動きを見せる。
とはいえこの2人は、昨年夏にも移籍が決まりかけていたこともあり十分予想されたもの。
今冬の移籍市場が大きな動きを見せたのはここからだった。
移籍市場の中心となったのは、例年通りリーグ全体で莫大な資金力を有するプレミアリーグ勢。今冬はその中でも勝ちきれない試合が続いていたアーセナルが主役だったといえるだろう。
アーセナルはマンチェスター・ユナイテッドとの間でアレクシス・サンチェスとムヒタリアンのトレードを決めると、さらにボルシア・ドルトムントからオーバメヤンを獲得。ドルトムントでコンビを組んだ2人がアーセナルで再びチームメイトとなった。
このオーバメヤンの移籍により“玉突き移籍”が発生。
オーバメヤンが加入したアーセナルからジルーが大型CFを求めていたチェルシーへの移籍が決まると、チェルシーからミチ・バチュアイが期限付き移籍でドルトムントへ移籍することが決まった。
モラタの不調により大型CFを求めていたチェルシーはジェコ(ローマ)やアンディ・キャロルなどの噂があがっていたが、この移籍により経験豊富なフランス代表CFを獲得することに成功。ドルトムントも若くスピードがあるストライカーを獲得できた形になり、3クラブ共に成功と言える移籍だったのではないだろうか。
首位独走中にマンチェスター・シティはこの大型移籍には絡まなかったものの、アスレチック・ビルバオから若きフランス代表CBラポルトを獲得。さらにスカッドを盤石なものとした。
がしかし、レスターのマハレズの移籍は決まらず。
マハレズにはマンチェスター・シティが6500万ポンド(約100億円)のビッグオファーを出し、移籍期間終盤にはマハレズ本人もクラブにトランスファーリクエストを出したにもかかわらず、レスターはさらに上乗せを求め9500万ポンドを要求。結局は破談となった。
クラブが移籍を認めるといったにもかかわらず今回も移籍できなかったマハレズ。「練習をボイコットした」との報道も出るようになり、今季のモチベーションが心配される。
プレミアリーグではその他にもセオ・ウォルコットがアーセナルからエバートンへ、パリ・サンジェルマンで出番を失っていたブラジル代表ドリブラーのルーカス・モウラはトッテナムへの加入が決まった。
フィリペ・コウチーニョのバルセロナ加入、ジエゴ・コスタのアトレティコ・マドリード復帰があったものの、レアル・マドリードは不調にもかかわらず大物の獲得もなく、目立った移籍が少なかったスペイン勢。
しかしバスク地方を代表する2クラブの間に大きな遺恨を残す移籍がきまった。
発端となったのはマンチェスター・シティがアスレチック・ビルバオからラポルトを獲得したこと。これを受けてDF獲得に迫られたアスレチック・ビルバオはレアル・ソシエダからイニゴ・マルティネスを獲得する。
この両チームはバスクを代表する2クラブであり立場的にはライバルチームといえるが、サポーターも含めて友好的な関係にあることで知られている。
がしかし、移籍期間終了を目前に突然きまった、下部組織から育ったチームのキャプテンであり、これまで何度もチーム愛を語っていたイニゴ・マルティネスの移籍に関しては衝撃が大きかった様子。今後のバスクダービーは雰囲気も変わってくるだろう。
ドイツではドルトムントはオーバメヤンの移籍とバチュアイの加入の他、バーゼル(スイス)から期待の若手DFマヌエル・アカンジを獲得、バイエルン・ミュンヘンは下部組織出身の苦労人FWザンドロ・ヴァーグナーをホッフェンハイムから獲得するなど、いくつか話題に上がったニュースもあったが、全体的には静かな移籍市場だったといえるだろう。
そんなドイツ以上に静かだったのがイタリア。期限付き移籍がほとんどで大物獲得といえるニュースはほぼ無かった。
日本人選手に関して最も話題になったのが、長友佑都のガラタサライへの期限付き移籍だろう。この移籍により1998年の中田英寿氏から続いていたセリエA日本人選手がついに途切れることになった。
またドイツでは原口元気がヘルタ・ベルリンから宇佐美貴史が所属する2部のデュッセルドルフへと移籍。原口は夏の移籍期間にプレミアリーグへの移籍を狙ったものの失敗。その結果ヘルタでは出場機会がなくなっていたので新天地でのチャレンジを決断した。原口のコンディション面は日本代表にとっても大きな問題となっていたので、今回の移籍で改善されることが期待される。
この冬の移籍期間で最も大きなステップアップを果たしたのがワースラント・ベベレンの森岡亮太。ベルギー挑戦から半年でベルギーを代表するビッグクラブ、アンデルレヒトへの移籍を勝ち取った。さらに背番号も10番を与えられており、クラブの期待の大きさを感じさせる。
この冬海を渡る決断をしたのが井手口陽介、豊川雄太、冨安健洋の3人。
井手口はガンバ大阪からイングランドチャンピオンシップのリーズ・ユナイテッドへ移籍した上でリーズの提携クラブとなるスペイン2部のクルトゥラル・レオネサへ期限付き加入。
豊川はファジアーノ岡山への期限付き移籍を終え鹿島アントラーズへ復帰した後に、ベルギーのKASオイベンへ。富安はアビスパ福岡から日本企業が資本を持つシント=トロイデンVVへの加入が決まった。
一方で、内田篤人(ウニオン・ベルリン(ドイツ2部)→鹿島アントラーズ)、坂井大将(大分トリニータから期限付きとなっていたAFCテュビズ(ベルギー2部)との契約を解除し、アルビレックス新潟へ期限付き移籍)、 松井大輔(オードラ・オポーレ(ポーランド2部)→横浜FC)は日本への復帰を選択している。