錦織vs.ワウリンカ 全米オープンテニス(2016)準決勝

日本時間:2016年9月10日朝

◎


対戦成績2勝3敗、2014年全米準々決勝の再現

準々決勝でアンディ・マレー(英国)との激闘を制した錦織。準決勝はスタン・ワウリンカ(スイス)との対戦となった。過去の対戦成績は錦織の2勝3敗。2014年全米オープン準々決勝では、フルセットで錦織が勝っている。ワウリンカにとっては、錦織が準優勝した2014年のリベンジマッチとなった。

第1セットは完璧だったが…明暗を分けた第2セット

準々決勝をセットごとに振り返る。

 第1セット序盤は両者とも危なげなくキープを繰り返したが、第5ゲームに突然アンフォースド・エラー(UE)を連発したワウリンカのスキを突く形で錦織がブレーク。ワイドなショットやドロップショットを効果的に放ち、6-4でセットを奪った。表だったミスもなく、錦織にとっては理想的な展開だったはずだ。

 第2セットは錦織が第1ゲームでリターンエースを奪い、幸先良くブレイク。しかし30度を超える高温多湿の環境が、徐々に錦織のプレーの精度を下げる。第4ゲームであっさりブレークバックを許し、第7ゲームは4つのブレークポイントを決めきれず。第12ゲームは、ワウリンカの代名詞といえるバックハンドのダウン・ザ・ラインを決められ、ブレークを許した。錦織にとってはこのセット、合わせて8つあったブレークポイントを1つしか取り切れなかったのが痛かった。

 第3セットもお互いブレイクを繰り返した。錦織は先にブレークを許したものの、第7ゲームで質のいいリターンを連発しブレークバック。ただ、第10ゲームの最後のプレーに見られるように、苦しまぎれのネットプレーに出て、ワウリンカのウィナーを許す展開は錦織のプレーン中では一番良くないパターンだった。

 第4セットも先にブレークを奪われる苦しい展開。第5ゲームで長いラリーを制してブレイクバックするが、直後の第6ゲームでフォアハンドのUEを連発。流れをつかむべきポイントでミスを繰り返した錦織。最後は錦織のフォアがネットにかかり、あっけなく敗れ去った。

「思考能力の低下」が勝負どころでの判断ミスを招く

マレーとのフルセットの激戦を制してから中1日。錦織は、暑さで「思考能力が低下した」と試合を振り返った。体力消耗でプレーの質が低下したのが敗因ではない、と錦織は強調したかったのだろうか。勝負どころでのとっさの判断がまずく、ワウリンカの良いプレーを引き出してしまったことを悔やんでいるのではないか。

 たしかにうなずけるところもある。準々決勝のマレー戦で、錦織はドロップショットなど随所で集中力のあるプレーを見せた。しかし準決勝では、ワウリンカの体勢が完全には崩れていないのにネットプレーに出るなど、とっさの判断力が鈍っていた印象もある。錦織がワウリンカに勝つパターンは、第1セットでワウリンカが見せたようなアンフォースド・エラーをとがめ、一瞬のスキをものにする形。錦織は第3、4セットでもブレークバックしており、その粘りは特筆すべきもの。ただ、やはり勝負どころでの集中力が今ひとつ足りなかった。

 もちろん、肉体的な疲労もピークに達していただろう。2日前にフルセットを戦ったのなら、短期決戦に持ち込むのがベストであることは言うまでもない。それを考えると、あっさりブレークを許した第2セットの第4ゲームと第12ゲーム、4つのブレークポイントを生かし切れなかった第7ゲームは、この試合の大きな分岐点だったといえる。

 試合のデータを見ても、錦織の失速が見て取れる。ファーストサーブの成功率は第1セットの71%から急降下し49%に。UEも第1セットの3から16、16、12と増えた。ワウリンカは第1セットこそUEが11だったが徐々に減らし、1セット当たり一桁台をキープ。尻上がりに調子を上げる姿は錦織とは対照的だった。試合中の走行距離も、第1セットは錦織が上回ったものの、試合全体ではワウリンカに300メートル近く水をあけられた。

それでもツアーファイナル出場は確実。世界ランク4位も視野に。

勝てば世界ランキング3位に浮上する大きな試合を落としたのは痛かった。ただ、錦織はリオ五輪から全米オープンをこなした夏場のプレーについて「今までで一番良かった気がする」と手応えを得ている。

 実際、全米4強でATPツアーファイナルの出場は確定的になったし、本人も安どしているのではないか。世界ランクを見ても、4位のナダルとはポイント差はわずか。全米後も、ナダルが比較的苦手とし、逆に錦織が得意とするハードコートのトーナメントが続く。世界ランク4位復帰や、四大大会での第4シード入りが視界に見えてきた。

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