錦織vs.マレー戦の死闘 全米オープンテニス(2016)準々決勝

日本時間:2016年9月8日朝

◎


男子テニス界の4強

テニスに詳しい人はご存知かもしれないが、現在のテニス界では4強と言って上位4人が非常に強い。この4人とは、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)、アンディ・マレー(イギリス)、ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)である。この4人は、他の時代に生まれていれば間違いなくそれぞれ時代の覇者になった人たちである。それが、同じ時代に4人もいるという現在の男子のテニス界は本当に面白い。最近のほとんどのグランドスラム大会の優勝者は、この4強から出ている。そこに、割って入ろうとしているのが、日本人の錦織圭である。最近はこの4強のうち、フェデラーは腰の故障の為に今季はすべての大会の欠場が決まっている。また、ナダルは、その独特の打ち方から、手首に負担がかかり、これまでのような輝かしい成果が出せなくなっている。現在ではジョコビッチとマレーが覇権を争っており、力は限りなく拮抗している。

最近の戦歴

今回、錦織が準々決勝で相手にしなければならないのは、このマレーである。テニスの試合というのはもちろん強い方が勝つわけだが、型対型というか、スタイルの違いによりATPランキングの高い人が、必ずしもいつも勝つわけではない。錦織選手から見れば、ジョコビッチの方が戦いやすく、マレーの方が相性が悪い。このマレーとの最近の試合は、デビスカップでの試合とオリンピックでの準決勝の試合である。デビスカップでは、3対2で勝ったが、オリンピックでは2セットのストレート負けで、内容も1-6,4-6で完敗だった。錦織の試合後の弁で、「マレーはまだまだ遠い気がする」と、言っていたのが印象的だった。

第1セット

サーブはマレーから始まり、第1ゲームで0-40となりながら、錦織がマレーのゲームを取れなかったのは後々大きかった。第1セットは、ちょうどオリンピックの準決勝の再現のようで、錦織が付け入る隙はなかった。しかし、内容をよく分析するとラインぎりぎりを狙いすぎたり、セカンドサーブを打ち込まれたりなどでマレーが圧倒的に強いという風ではなかった。錦織は、第4ゲームをブレークされゲーム数で1-3、第6ゲームもブレークされ1-5となりそのまま第1セットを失った。

第2セット

第2セットには、雨の為の中断が2度あった。第4ゲームと第7ゲーム中だった。第7ゲームの中断は、屋根を閉める為に両選手はベンチに帰った。これは、結果的には錦織に味方したような気がする。両選手のブレークが第5、第6ゲームにあり、結局、第9ゲームまでイーブンと同じスコアで錦織の5-4となる。第10ゲームで、錦織はマレーのサーブを破り、あっさりと第2セットを取り返した。しつこく、粘り強くマレーに食い下がったのが良かったのだろう。

第3セット

このセットも、両選手にブレークがあったが、結局第8ゲームまでで4-4とイーブンと同じ。第9ゲームが錦織のサーブで、このゲームをブレークされた。第10ゲームは、マレーがサーブでキープし、錦織はこのセットを4-6で失った。

第4セット

錦織は第4ゲームを先にブレークし、3-1とする。次の第5ゲームで錦織の苦し紛れのロブの回転が強くてマレー側のベースライン上に落ちた。マレーは珍しく目測を誤り、アウトボールと判断し、途中で追いかけ始めたが間に合わなかった。苦し紛れのショットに見えたが、錦織がデザインしたショットなら、超スーパーショットだと思う。疲れの見えるマレーから第6ゲームをブレークし、5-1とする。続く第7ゲームを錦織がキープしこのセットを制し、最終セットに夢をつないだ。

第5セット

このセットになってからマレーの疲れが見えるような気がした。初めのゲームを錦織がブレークして元気さが目立った。第4ゲームでブレークされ、続く第5ゲームでブレークバックして、錦織の3-2となり、第7ゲームで4-3となる。しかし、第8ゲームでマレーにブレークされイーブンと同じで4-4となる。第10ゲームを終わったところで5-5。第11ゲームがマレーのサーブで、錦織はドロップショットを打つ。これをマレーは拾ってネット際に落としたが錦織の俊敏なボレーで打ち返した。これも超スーパーショットだろう。このため、錦織は、このゲームをブレークし、次のゲームをとって4時間を超える死闘に終止符をうった。両者の疲れが見えた最終セットであったが、本当に名勝負だったと思う。こんな素晴らしい試合を見られて感動し、両選手の稀に見る天賦の才に驚嘆した。

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