歴代の凱旋門賞勝ち馬は、開催国フランスを筆頭にイギリス・アイルランド・イタリア・ドイツでの調教馬であり、欧州馬以外に存在しない。近年、日本馬が史上初の欧州馬以外の凱旋門賞制覇を狙い続けているが、届きそうで届かないもどかしい状態が続いている。「2016年こそは」という願いを込め、過去5年間の優勝馬と日本馬のレース結果を総括する。
着順/馬名/馬齢 |
騎手名/原産国 |
1着/デインドリーム/牝3 |
A.シュタルケ/独国 |
10着/ヒルノダムール/牡4 |
藤田伸二/日本 |
11着/ナカヤマフェスタ11着/牡5 |
蛯名正義/日本 |
前年の凱旋門賞2着馬ナカヤマフェスタ、天皇賞(春)で初G1を制し勢いに乗るヒルノダムールが挑戦した。
優勝したのは、デインドリーム。道中は中団にじっくり待機し、直線に入ると鋭く末脚を伸ばして2着シャレータに5馬身差をつける圧勝劇。
ヒルノダムールはスタートを決め、内の経済コースを通り5番手と絶好のポジションでレースを運んだが、直線は手応えなく失速して10着。ナカヤマフェスタは後方2番手でレースを進め、直線外に回し追い込みを狙うが先頭との差は全く縮まらないまま11着。
勝ちタイム2.24.9秒は1945年以降最も早い勝ちタイムであり、当日は日本馬向きの芝コンディションとなる追い風もあったが、ナカヤマフェスタは昨年より明らかに出来落ちの状態、ヒルノダムールは地力不足の印象で、両馬とも見せ場なく敗れた。
着順/馬名/馬齢 |
騎手名/原産国 |
1着/ソレミア/牝4 |
O.ペリエ/フランス |
2着/オルフェーヴル/牡4 |
C.スミヨン/日本 |
17着/アヴェンティーノ/牡8 |
A.クラストゥス/日本 |
日本競馬史上最強馬の1頭であるオルフェーヴルが、帯同馬・アヴェンティーノを引き連れ日本の総大将として参戦。
レースは極度の不良馬場、かなりのスローペースで展開し有力馬は馬群にひとかたまりの状態、オルフェーヴルはアヴェンティーノの先導に従い後方2.3番手で折り合いに専念する。
4角を迎えるとオルフェーヴルは唸るような手応えで手綱を持ったまま先行に並びかける。直線に入ると桁違いの瞬発力であっという間に先頭集団を飲み込み、その瞬間誰もが圧勝シーンを想像した。直後、残り200mで急激に内によれはじめ脚色が鈍る。なんとかゴールまで押し切ってくれるかと思われたが、好位で脚を溜めていた不良馬場巧者のソレミアがじわじわと差を縮め、ゴール直前10mでクビ差逆転。
日本の競馬ファンは30秒足らずの直線で、歓喜と悲哀の両極を味わうことになった。
仕掛けを早まったのでは、乗り慣れた池添が乗っていればという様々なタラレバはあるが、1番強い競馬をしたのは間違いなくオルフェーヴルであり、日本馬が最も凱旋門賞制覇に近づいた日であった。
着順/馬名/馬齢 |
騎手名/原産国 |
1着/トレヴ/牝3 |
T.ジャルネ/フランス |
2着/オルフェーヴル/牡5 |
C.スミヨン/日本 |
4着/キズナ/牡3 |
武豊/日本 |
ロンシャンで雪辱を果たすために現役続行したオルフェーヴル、そしてディープインパクト産駒のキズナが日本ダービー馬としては初めて3歳で凱旋門賞に出走した。
両馬ともニエル賞(G2)・フォワ賞(G2)の前哨戦を快勝し、ディープインパクトが出走した第85回以来の数多く日本ファンがロンシャンへ応援に駆けつけ、レース前には凱旋門賞制覇の期待が最高潮になった年である。
しかし、1頭のレジェンド級3歳牝馬がいたことが誤算だった。
レースは最後の直線の入口でトレヴが驚異の加速力を見せつけ、馬なりであっという間に先頭に立つ。オルフェーヴルとキズナも手応え十分で馬群から抜け出し馬体を併せて懸命に追走するが、騎手が追い出すとトレヴは再度加速してグングン差を広げる。
キズナは見せ場もつくり善戦の4着、オルフェーヴルも世界最強クラスの実力を見せつけ2着を確保するが、圧勝したトレヴはその5馬身先を走っていた。
トレヴは5戦5勝で凱旋門賞制覇。日本馬2頭は世界レベルの強さを示すパフォーマンスをしたものの、相手が悪かったとしかいえない結末となった。
着順/馬名/馬齢 |
騎手名/原産国 |
1着/トレヴ/牝4 |
T.ジャルネ/フランス |
6着/ハープスター/牝3 |
川田将雅/日本 |
8着/ジャスタウェイ/牡5 |
福永祐一/日本 |
14着/ゴールドシップ/牡5 |
横山典弘/日本 |
GⅠ5勝馬のゴールドシップ、世界No.1レイティングのジャスタウェイ、日本馬として初の3歳牝馬で挑戦したハープスターが出走。
前年度覇者トレヴもエントリーしてきたが、同年はここまで3戦して勝ち星なしと前年までの圧倒的な強さが影を潜めつけ入る隙は十分にあった。
日本馬初の3頭出し、それぞれ持ち味の違うタイプの強い馬であり、どんな展開になってもどれか1頭くらいは何とかしてくれるのではという淡い期待が戦前にはあった。
レースはスタート直後、ゴールドシップが行き脚がつかず最後方、ジャスタウェイ・ハープスターも積極的にポジションを取りに行かず17番手・19番手の位置取り。一方、トレヴは前目に付け最内ぴったりの経済コースでレースを運ぶ。
道中も動きがないまま直線を迎え、ゴールドシップとハープスターが大外を、ジャスタウェイは内の進路を選択。しかし3頭が仕掛けたそのとき、既に先団にいたトレヴは最内に進路を確保しスピードにのって後続を突き放しはじめていた。
近走の不調が嘘のような鮮やかさで直線を抜け出し、トレヴが連覇を達成。既に大勢が決した後にハープスターが際立った末脚で追い込んで6着と最先着。日本馬3頭は消去的な位置取りと策のないレース運びが仇となり、1頭も勝ち負けに加わることができずに敗れ去った。
着順/馬名/馬齢 |
騎手名/原産国 |
1着/ゴールデンホーン/牡3 |
L.デットーリ/イギリス |
2着/フリントシャー/牡5 |
M.ギュイヨン/フランス |
4着/トレヴ/牝5 |
T.ジャルネ/フランス |
事前登録していたエピファネイアは繋靭帯炎、ドゥラメンテは骨折、リアルスティールとルージュバックは国内ローテを選択したことで、2009年以来6年ぶりに日本馬不在の凱旋門賞となった。
注目は、史上初の凱旋門賞3連覇を目指すトレヴ。前哨戦・ヴェルメイユ賞も快勝して2015年は3戦3勝、歴史的偉業を目撃しようとファンも単勝1.8倍の支持をしてレースを迎えた。
レースはスタート直後、L.デットーリの閃きでゴールデンホーンが折り合いをつけるため馬群から一旦離れ、マイペースで2番手に取り付く。一団状態でレースが進み、フォルスストレートでトレヴがポジションをあげようと仕掛けるが、いつもの圧倒的な加速力が見られない。
直線に向いて先頭に立ったゴールデンホーンが、詰め寄る後続をきっちり2馬身差抑えて完勝。前半で折り合いを欠いた影響なのか、トレヴは直線伸び悩み4着入線で3連覇の偉業を逃した。
2016年の凱旋門賞は、ロンシャン競馬場が改修工事に入るため、シャンティ競馬場での代替開催。
4月末現在で登録馬は未定だが、日本馬では現役最強馬・ドゥラメンテ、皐月賞馬・ディーマジェスティ、ドバイターフ勝ち馬・リアルスティールあたりが出走を視野に入れているのではとされている。
ロンシャン開催ではなかったから勝てたなどとの言われないよう、日本代表馬には欧州競馬関係者が文句をつけようがないくらいの完全勝利を今年こそ期待したい。