2016-2017シーズン羽生結弦選手 グランプリシリーズ予想

フィギュアスケート

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☆2016年5月12日 WSCスタッフ呟き☆

2015-2016シーズン、惜しくも世界選手権の優勝は逃したものの、自身の持つ世界記録を次々更新し、男子フィギュアスケートのレベルを確実に押し上げた羽生結弦選手。10月末の「スケートアメリカ」を皮切りに「スケートカナダ」、「ロシア杯」、「エリック・ボンパート杯」、「中国杯」、「NHK杯」と続くグランプリシリーズのどの大会に羽生選手が出場するかは、2016年6月末の発表までわかりませんが、羽生選手がグランプリシリーズをどう戦うのか、現時点での予想をしてみましょう。(2016.5.12時点情報)

世界記録更新

2015-2016シーズンまで総合点が300点に達することは、男子フィギュアスケートでは超人的なことと思われてきました。これまでそれに一番近かった得点は、2013年にカナダのパトリック・チャン選手が出した295.27点です。それが昨シーズン、羽生選手によって一気に330.43点にまで押し上げられたのです。
2015年10月のスケートカナダで、羽生選手はこれまでのキャリア最悪とも言えるショートプログラムを滑り、休養から競技へ復帰したチャン選手に敗れました。その悔しさをバネに、羽生選手は続くNHK杯に3回転ルッツを4回転サルコーに、4回転トウを4回転-3回転コンビネーションに置き換える、思い切った戦略で臨みました。3回の4回転ジャンプ、2回のトリプルアクセルを含むほぼ完璧なフリーの演技で、世界記録を更新したのです。

2015-2016シーズングランプリファイナル

2015年12月のグランプリ・ファイナルでも2つの完璧なプログラムをそろえ、世界記録を再更新、地元のハビエル・フェルナンデス選手を抑えて優勝しました。
翌月の欧州選手権では、フェルナンデス選手がショートに2つ目の4回転ジャンプを加え、フリーには2つ目のトリプルアクセルを加えて優勝。2月の四大陸選手権ではチャン選手もフリーに2つ目のトリプルアクセルを加え、デニス・テン選手は、世界選手権を視野に入れて4回転サルコーをフリーに追加、宇野昌磨選手はチームチャレンジ杯で世界初の4回転フリップを着氷しました。

靭帯損傷

このように男子フィギュアの技術の進化は止まるところを知りません。しかし、シーズン締めくくりの世界選手権直後、羽生選手は左足甲の靱帯の損傷で全治2か月の休養を発表します。抱えていた足の痛みは、冬の2か月間4回転ジャンプが飛べなかったほど。これについて羽生選手は「長年のジャンプの着氷の衝撃の積み重ねと、フリー後半に4回転ジャンプを入れることが筋肉だけでなく、骨や靱帯にも負担をかけること」が原因と考えています。現在の男子フィギュアが人間の身体が持ちこたえられる限界に達していると感じる一方で、身体への衝撃を減らす技術が生まれるのではないかとも期待しています。

世界選手権で勝てなかった理由

これだけ高い世界記録を持つ羽生選手が世界選手権を制することができなかった理由を、ある解説者はこう指摘します。フェルナンデス選手が勝つことと、観衆を楽しませることを第一にしていたのに対して、羽生選手とチャン選手は、自らの完璧な滑りを再現することを目指していたのではないか。「シーズン中に達成した、自分のあの完璧な演技をもう一度再現したい」という思いが二人の心を占めていたのではないかと。最初のジャンプミスが出た時点で、もう完璧はありえないという心理がその先の演技にも影響したのだろうというのです。これは正しい仮説のようです。世界選手権後「これからは、自分のしたい演技だけでなく、競技である以上勝つことも目標にしたい」と語った浅田真央選手のように。
羽生選手が、最初のジャンプにつまずいても、次のジャンプを立て直せなかったのはなぜでしょうか。あまりにも独りでレベルを高め続けてしまった彼には、自分以上のライバルが存在せず、負かすべきは過去の自分の演技となってしまっています。「自分の限界に挑戦し続ける」「自分がどこまで進化できるのかが楽しみ」と彼は語るのです。

2016-2017 グランプリシリーズに向けて

来るべきシーズンのグランプリシリーズで、彼はどのような戦略に出てくるのでしょうか。「もっと難しい4回転ジャンプの開発」「もっと質の高い4回転ジャンプを目指す」という言葉は、昨シーズンの彼の口からすでに出ているものの、「次のオリンピックで勝つためには、いくつの4回転、何種類の4回転が必要か」という質問には「正しい一つの答えはない」としながら、「ショートに4回転を2つ入れなくても、完璧にプラスのGOEを取れば、勝つことはできる」とも語っています。
ただ勝つだけでは物足りない。勝つなら、自分の限界に挑む滑りをして勝ちたい、というのが彼の目標でしょう。今持っている、世界で一番質の高い4回転ジャンプに加えて、4回転サルコーを磨きあげ、演技をより観客に伝わるものにする。新しい技を加えるよりも、演技全体の質を高めて、ジャンプが無くても感銘を与えられる羽生にすることが、故障で準備の遅れる来シーズン前半のグランプリシリーズでは現実的な戦略と言えるのではないでしょうか。

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